Vチューバーへの「いじり」

「ほう！」な話『「ほう！」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2023年6月21日

▼Q　バーチャルユーチューバー（Vチューバー）に、つい「いじり」をしてしまいます。やめた方がいいでしょうか。

▼A　インターネットでCGのキャラクターを通して動画を配信するVチューバー。これをからかうのが「いじり」コメントですね。基本的にやめた方がいいです。

Vチューバーの中には、「愛のあるいじりはOK」というルールを掲げる方もいるようです。誹謗（ひぼう）中傷は違法だけど、「いじり」は違法ではないなどと説明されることもあるようです。しかし、誹謗中傷も「いじり」も実際の区別は曖昧です。

例えば、身体的特徴や外見をからかうコメントは、誹謗中傷と「いじり」のどちらでしょうか。「いじり」のつもりであっても、何度も繰り返せば、Vチューバーは多くの視聴者の前で何度もからかわれることになります。この場合、法的には社会通念上許容される限度を超えて侮辱したもの（誹謗中傷）として、違法となることがあります。

また、Vチューバーが積極的に公表していない経歴をからかうコメントはどうでしょうか。法的には名誉やプライバシーを侵害されたとして、違法となることがあります。

Vチューバーは、本名や容姿を公開せず、架空の名前や容姿を使用していますが、自身の個性を生かした活動をしており、中身は同じ人間です。「いじり」コメントをする前に、もし自分が多くの視聴者の前で容姿や配信中のミスなどをからかわれるコメントをされたらどう思うか、Vチューバーと自身を置き換えて考えてみましょう。