「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2022年10月26日

違憲判決が少ないのはなぜ?

▼Q 今年5月、最高裁で国民審査在外投票の違憲判決が出ましたが、これが最高裁で戦後11件目の違憲判決だと知りました。なぜそんなに少ないのでしょうか?

▼A 日本の違憲判決は米国と比べて1割以下とも言われていて、確かに少ないですね。日本の裁判所は、案件の解決に必要な場合以外は違憲審査(憲法違反がないか審理して判断すること)をしません。違憲という結論を出すのにも慎重で、とりわけ、世論が割れる政治性の高い問題については、判断自体を避ける傾向があります。

これは、国民主権の下、国会で議論し決められた法律を尊重し、裁判所はできるだけ控えめな方が良いという考えによるものです。

ところが、国会では多数派による「数の力」で、少数者の権利が軽視される危険性があります。裁判所が「憲法の番人」として違憲審査で法律をチェックして、権利の侵害を防ぐという仕組みはやはり重要です。

今回の判決は、海外に住む日本人が最高裁裁判官の国民審査に投票できない法律に対するものでした。在外投票する人が少数でも、その機会がない制度には大きな問題があります。ところが国会ではなかなか改善されなかったため、ついに裁判所が違憲判決に踏み切ったといえます。

とはいえ、実は憲法が一番期待しているのは、主権者である私たち国民によるチェックです。憲法違反の法律が制定されていないか、憲法違反の政治が行われていないか、常に目を光らせておく必要があります。そして選挙で判断を下す。そんな自覚を持ち、社会に目を向けていくことが大切です。

西日本新聞 10月26日分掲載(山崎あづさ)

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