「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2018年12月19日

子どもが賃貸住宅で自死した

▼Q 子どもが賃貸アパートで自ら命を絶ちました。大家さんから損害賠償請求されますか。

▼A 自死によって壊れた部分の修理代や将来の賃料の一部を請求される可能性があります。しかし「自死によって部屋の価値が下がる」という考え方は偏見に基づくもので、問題があると近年は指摘されています。自死の多くが「追い込まれた末の死」であることを考えると、遺族が責任を問われるべきではない場合もあります。

まずは「賃貸借契約書」を見て、あなたが契約上どのような立場か確認しましょう。賃借人もしくは連帯保証人(保証人も同様)になっているときは、損害賠償責任を追及されることがあります。賃借人でも連帯保証人でもないときは、契約上の責任は負いません。

もっとも、あなたがお子さんの相続人であれば、お子さんの損害賠償債務を相続したとみなされ、責任追及されることがあります。この場合、相続放棄をすれば免れることができます。しかし放棄すると、たとえ過労による自死でも、会社に対する損害賠償請求権も相続できなくなるので、慎重に判断してください。相続放棄の手続きは、お子さんの死亡を知ったときから3カ月以内が原則なので、早めの対応が必要です。

あなたが賃借人、連帯保証人、相続人として責任を追及されても、お子さんが自死の際に責任無能力であったことを証明できれば責任を問われません。例えば、精神疾患で病的な自死願望を抱いていた場合などです。責任無能力を証明するには、医師の診断書やカルテなどが有効です。

西日本新聞 12月19日分掲載(三好有理)

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