「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2023年1月11日

ペットが交通事故の被害に 裁判は?

▼Q わが子のようにかわいがっていた飼い犬が車にひかれて大けがをしました。運転手に治療費や慰謝料は請求できますか。刑事責任は問えないのですか。

▼A 家族同様の存在でも、ペット(愛玩動物)は法的には「物(もの)」として扱われます。治療費は、理論的には交通事故の修理費と同種のものなので、基本的に請求できます。ペットショップでの価格などを参考に、社会的に相当な金額の請求とするのが実情です。6万5千円で購入した犬について、治療などに不可欠な範囲の11万1500円の請求が認められたケースがあります。

慰謝料請求は、物的な損害では一般的には認められません。しかし、ペットはただの物ではなく、生命を持つ存在です。このため、慰謝料を例外的に認める判例も少しずつ出ています。上記の治療費請求が認められたケースでは、子どものいない原告のご夫婦(飼い主)にとって、わが子に匹敵するほどの存在であったこと、けがの程度が重いことなどを考慮し、夫婦1人あたり20万円の慰謝料が認められました。

刑事責任については刑法の器物損壊罪が問題になります。ただ、過失では器物損壊罪は成立しません。故意にひいたのではない限り、刑事責任を問うのは困難と思われます。

ペットが死亡した際の葬儀や火葬費用の賠償を命じる事例も出てきています。ペットとの関係性が変化し、司法も少しずつ変化しています。

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西日本新聞 1月11日分掲載(春田久美子)

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