「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2019年6月5日

会社を辞めさせてもらえない

▼Q 会社を退職したいが、「今は困る」「顧客に迷惑が掛かる」などと、なかなか辞めさせてもらえません。退職代行サービスを利用しようと思っていますが・・・。

▼A 退職(辞職)とは、労働者から使用者に対し、労働契約を解約することをいいます。契約期間の定めの有無や給与の支払い方法によって、退職に必要な条件は若干異なりますが、手続きはそれほど複雑ではありません。民法の規定により、期間の定めがない正社員は、2週間前に「辞めたい」と会社に伝えれば退職できます。期間の定めがある契約社員などは、「やむを得ない事由」が必要ですが、実際に事由の提示を求められる場合は少ないようです。

ただ、退職させまいと必死の会社は、失業保険を受けるのに必要な離職票を交付しなかったり、雇用保険被保険者資格喪失届の手続きを怠ったり、社員に損害賠償請求をちらつかせたりすることがあります。このような行為は違法の可能性があるため、会社への法的対応(交渉などを含む)が必要になる場合があります。

弁護士法は、弁護士でない人が報酬を得て交渉などの法律事務を行うことを禁じています。お尋ねの退職代行サービスに弁護士が関わっていないのでしたら、退職意思を会社側に伝えたり、連絡を仲介したりはできますが、トラブル時の交渉などは自分でしなければいけないと考えてください。

日本弁護士連合会は10日午前10時~午後10時、無料の全国一斉労働相談ホットライン=0570(036)610=を開設します。ご相談ください。

西日本新聞 6月5日分掲載(武寛兼)

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