「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2015年1月28日

刑事裁判の証拠で損害賠償も

▼Q 会社の新年会から徒歩で帰宅中、擦れ違いざまに男性から「肩がぶつかったのに謝罪がない」などといいがかりを付けられました。顔などを殴られ、大けがを負いました。男性は逮捕され、刑事裁判があるとの連絡を検察庁から受けました。刑事と民事は別と聞いたことがあります。この男性に治療費や慰謝料を請求するにはどうすればよいのでしょうか。

▼A おっしゃるとおり、刑事裁判は、国家が個人に刑罰を科すための手続きであり、金銭賠償などを求めるときに利用する民事裁判とは別。刑事裁判が行われたから慰謝料などが支払われることにはなりません。加害男性に損害賠償を請求し、交渉が決裂した場合、民事訴訟を提起する必要があります。

今回のように、故意の傷害事件の場合、損害賠償命令の申し立てといって、刑事裁判の証拠を利用しながら迅速に損害額を判断してもらう制度を利用することもできます。この制度を利用すれば、刑事裁判の終了後、裁判所が素早く損害賠償額の算定をしてくれます。

ただ、早期に賠償問題を解決したい場合、被害者の方が直接加害者と交渉するのは苦痛を伴います。加害者が提示する金額が妥当なものなのか判断がつかないことも。
一人で悩まず、弁護士に相談してください。

福岡県弁護士会では、犯罪被害者やご家族を対象に毎週火曜と金曜の午後4~7時まで、無料電話相談=092(738)8363を実施しています。

西日本新聞 1月28日分掲載(網谷 拓)

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