「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2020年6月3日

コロナ禍、休業手当もらえる?

▼Q 勤務先の飲食店が新型コロナウイルスの影響で休業してしまいました。休業中の手当はもらえないのでしょうか。

▼A 事業者側に休業手当の支払い義務があるかどうかは、休業する理由によって異なります。

まず、休業が事業者にとって不可抗力である場合は、休業手当を支払う義務は負いません。例えば、デパートにテナントとして入る飲食店が、デパートの全館休業によって店を閉めざるを得なくなったケースなどが該当する可能性があります。

一方、自社店舗で休業が必須ではない飲食店など、事業者の自主判断で休業する場合は、あなたに休業手当を支払う必要があります。

休業手当は、従業員が仕事を休んでいるのに平均賃金の60%以上を支払うものです。勤務先の経営も苦しい中で、休業手当を請求するのは気が引けるかもしれません。しかし、勤務先は条件を満たせば、支払った休業手当の大部分を補う「雇用調整助成金」などの公的支援が受けられます。不可抗力による休業で、休業手当の支払い義務がない事業者が、あえて従業員のために休業手当を支払った場合も、助成金は受けられます。協力し合って公的支援を受けるという姿勢で、勤務先に相談してみてはいかがでしょう。

ただ申請手続きが繁雑だったり、休業手当を先払いする資力がなかったりして、助成金を申請したがらない事業者は多く、現に休業手当がもらえず困っている労働者はたくさんいます。政府は今、そうした方向けの直接給付金制度の導入も検討しています。今後の動きを注視してください。

西日本新聞 6月3日分掲載(真鍋彰啓)

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