「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2015年1月14日

認知症 成年後見申し立てを

▼Q 私の父(80)が最近、認知症と診断されました。一方で伯父が死亡。伯父には祖父母から受け継いだ遺産があるようです。伯父の奥さんは健在ですが子どもはいません。父のきょうだいは亡くなった伯父と父、叔母の3人です。伯父の財産相続は法律上どうなり、手続きはどう進めればよいでしょうか。

▼A 亡くなられた伯父に子や父母がいないので法律上、相続権は配偶者ときょうだいにあります。相続割合は伯父の妻が4分の3、父親と叔母がそれぞれ8分の1ずつ。父親も法定相続人として具体的な分割方法を協議し、整わなければ家庭裁判所で調停や審判を行います。

しかし、父親は認知症で判断能力が低下しているため、不合理な協議をしたり、後日、遺産分割協議の効力に問題が生じたりするなどトラブルになる恐れがあります。協議に入る前に、家裁に成年後見制度の申し立てをするのが得策でしょう。

家裁が成年後見人を選任すると、成年後見人が父親に代わって遺産分割協議や調停などを行います。申し立ては本人、配偶者のほかに4親等以内の親族もできますので相談者も申し立てできます。成年後見人は、父親に代わり預金解約や介護保険契約などさまざまな契約を締結したり、父親が無断でした不当な契約を取り消したりできます。父親が安心して暮らすためにも成年後見制度の申し立てをお勧めします。

西日本新聞 1月14日分掲載(吉永 裕介)

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