「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2019年11月27日

犯罪被害の賠償を受けられていない

▼Q 犯罪被害に遭い、加害者に対して損害賠償を求める裁判を起こして勝訴しました。判決確定からもうすぐ10年ですが、加害者が服役しているため賠償を受けられていません。加害者の出所後に請求するつもりですが、このまま待っていてもいいのでしょうか。

▼A 民法は、判決で確定した権利の消滅時効期間を10年と定めています。裁判で勝訴しても、そのままにしていると、10年で賠償金を請求する権利は失われてしまいます。出所後に請求したいのであれば、時効を迎えることのないよう、時効を中断する手続きを取る必要があります。

中断するには、加害者に対してもう一度裁判を起こす「再提訴」をする方法があります。ただ、裁判所に納付する印紙代などの費用がかかります。犯罪に遭ってさまざまな負担を負った被害者や遺族にとっては、費用がネックとなり、再提訴をあきらめたケースも過去にありました。

そこで福岡県は、殺人事件の遺族や、強盗、放火などの重大犯罪に遭って心身に大きな傷を負った被害者が、泣き寝入りすることなく、損害賠償請求が適切かつ円滑に行えるよう、再提訴費用を助成する新制度を9月5日から始めました。一つの請求事案につき、再提訴費用を1回だけ助成し、上限額は32万円です。

あなたも県内にお住まいで、一定の収入を下回るようであれば、この制度を利用することができるかもしれません。詳しくは県生活安全課にお尋ねください。

西日本新聞 11月27日分掲載(林誠)

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