「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2022年7月6日

子どもの声、みんなで聴こう

▼Q 子どもが不登校になりました。最近、「子どもアドボカシー」という言葉を聞きましたが、うちの子にも関係がありますか。

▼A 国会で「こども基本法」が成立しました。「こどもまんなか社会」を目指して国のこども施策の基本理念などを定めています。その一つに子どもの意見の尊重が掲げられています。

1994年に日本が批准した「子どもの権利条約」は意見表明権を最も大切な権利と位置づけています。子どもが自分の意見を人に伝えることはその子どもの権利なのです。

子どもアドボカシーはこの意見表明権を実現するさまざまな取り組みを指します。例えば国は、親と離れて施設や里親家庭で暮らす子どもの気持ちを聴いて、考えをまとめるのを手助けしたり、代弁したりする「子どもアドボケイト」を派遣する事業を行っています。

子どもアドボカシーは特別な環境にある子どもだけでなく、全ての子どもに必要な取り組みです。子どもの話はよく聴いているようで、実際には十分には聴いていないことも多くあります。「後でね」と言ってそのまま終わったり、忙しい振りをして話しかけにくく思わせたりしていませんか。聴き手は親や学校の先生だけではありません。時々あいさつを交わす近所の人も、いつも一緒の友だちも、皆が聴き手なのです。

不登校のお子さんも自分の気持ちを十分に聴いてもらえないと感じているかもしれません。大人が一言言う前に「うん」と受け止めること。「こどもまんなか社会」を実現する第一歩です。

西日本新聞 7月6日分掲載(安孫子健輔)

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