「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2021年12月8日

事故物件の告知義務は?

▼Q 小さなアパートのオーナーです。新しい入居者と契約するのですが、その部屋では5年前に入居者が自殺しました。そのことを言っておいた方がよいのでしょうか。

▼A 賃貸する以上は、原則として部屋を瑕疵(かし)(欠陥)のない状態で貸す義務があります。瑕疵がある場合は契約前に告げておかなくてはなりません。これをしないと債務不履行となり、損害賠償を求められることもあります。

部屋の瑕疵には、強度不足、雨漏りや、設備の故障などがあります。近隣の騒音、暴力団の事務所など建物そのものではないものも、瑕疵になることがあります。

自殺の告知については、これまで明確な基準がありませんでした。このため、物件オーナーが個別に判断するしかありませんでした。そこで国土交通省が今年10月、「人の死の告知に関するガイドライン」を発表しました。

これによると、賃貸物件で自殺があった場合には、原則として3年間は、事故物件であることなどを告知する必要があります。なお、孤独死などの自然死の場合には、発見が大幅に遅れていわゆる特殊清掃が必要になったときなどに限って、告知が必要となります。

このガイドラインは不動産業者向けですが、賃貸物件のオーナーや入居者の参考にもなります。

相談のケースでは自殺から5年たっていますので、ガイドラインに照らせば、基本的には告知しなくてよさそうです。これを前提に、一応言っておくかどうか検討してみてください。

西日本新聞 12月8日分掲載(出光良彰)

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