「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2023年9月20日

固定資産税の徴収ミス 返金は?

▼Q 10年以上固定資産税を多く取られていたことが最近分かりました。市役所は、返金は5年分までと言います。市役所のミスなのにおかしくないですか。

▼A 地方税法には、誤って納付した税金の返還請求権の消滅時効は5年という規定があります。市役所の説明は、これを根拠とするものと思われます。

しかし、徴収ミスの原因は市役所にあります。実際、固定資産税の徴収ミスは少なくありません。このため、多くの市町村では、固定資産税の返還に関する条例や要綱を定め、独自に5年以上の返金をしています。

まずは、お住まいの市に、このような条例や要綱がないか問い合わせてみてください。

条例や要綱の内容は市町村ごとに違います。また、市町村の担当者が内容をよく理解していないこともあります。担当者の口頭の説明をうのみにせず、その市の条例や要綱の原文をもらって、内容を確認することをお勧めします。

条例や要綱がない場合は、地方税法の5年の消滅時効の原則に戻ってしまうので、返還請求はなかなか認められません。法律的には、返還請求ではなく、不注意で課税した市町村への損害賠償請求という形で請求の余地があります。もっとも、賠償請求となると裁判が必要になることが多く、裁判をしても市町村側に重い不注意がないと請求は認められない傾向にあります。

どの場合でも、法律上の仕組みの理解が大切です。弁護士にご相談ください。

西日本新聞 9月20日分掲載(田中謙二)

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