「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2022年4月13日

人権デューデリジェンスとは?

▼Q ビジネス界で「人権デューデリジェンス」という言葉を聞きますが、一体なんでしょうか。私たちにできることはありますか?

▼A 私たちが普段何げなく買う製品が作られる過程には、世界中の人々が関わっています。洋服であれば、誰かが綿花を栽培し、収穫して工場へ運び、糸や生地にして服を縫い、出来上がった服をまた運んで、私たちの手に届きます。

ものづくりに限らず、企業がさまざまな取引先と関わりながら事業を行う過程で、強制労働や児童労働、ハラスメント、差別などの人権侵害がないか調べて開示したり、予防策を講じたりすることが、人権デューデリジェンス(DD)です。

日本は国連決議を受けて2020年10月、企業活動における人権尊重を促す「行動計画」を策定し、企業に対し人権DDの啓発などを進めています。東証上場企業の行動指針を定めたコーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)も改訂され、人権尊重を求める規定が盛り込まれました。これにより上場企業は、より具体的な取り組みを検討するようになりました。きちんと対応しないと、海外の大企業から取引を打ち切られたり、消費者からの不買運動や、株式投資をしてもらえない、株主総会の議案に賛成してもらえないなどのリスクにつながるからです。

私たち個人ができることは限られていますが、世界の人々の人権侵害がなくなることを願うだけでなく、きちんとポリシーを掲げ、人権DDを実行する企業の製品を買うこと、これが初めの一歩かもしれません。

西日本新聞 4月13日分掲載(家永由佳里)

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