「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2019年3月20日

地震でひび、欠陥住宅では

▼Q 地震の際、建て替えたばかりの自宅の壁の一部が崩れてしまいました。近所でうちのように損壊した家があるとは全く聞かず、もともと欠陥があったのではないかと疑っています。建設業者に責任を問うことはできますか。

▼A 前回に引き続き、災害による住宅損壊の話ですね。今回は持ち家です。原則、地震や豪雨などの自然災害で生じた住宅の倒壊・損壊などの損害は、建設業者に責任を追及することはできません。

ただ、住宅の引き渡し時に建築物に欠陥(瑕疵(かし))があり、そのせいで地震に耐えられず壊れたような場合は、建設業者に対し、修理の請求(瑕疵修補請求)や別業者に修理を頼んだ際の費用、修理期間中に借家に住む場合は家賃や引っ越し代金などの損害賠償請求といった法的手段が考えられます。ひどい欠陥で建て替えなければならない場合は、建て替え費用の損害賠償請求も考えられます。

このケースは引き渡し時から欠陥があったといえるかが、業者との間で争いになると思われます。

このような紛争は、厳密な立証が求められる裁判よりも、中立的な第三者を立てて話し合う方が柔軟な解決ができるかもしれません。裁判によらない紛争の解決手続きをADRといい、弁護士会やNPO法人などが行っています。

福岡県弁護士会は、昨年の西日本豪雨やおととしの九州豪雨にまつわる民事上のトラブルについて、弁護士が双方の言い分を聞き、円満解決を図る「災害ADR」を行っています。申し立て手数料は無料です。

西日本新聞 3月20日分掲載(溝江香菜子)

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