「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2016年5月18日

墓や仏壇の継承は協議して

▼Q 父が亡くなりました。母は既に他界し、相続人は私(長男)と弟。2人とも遠方におり、法事や、先祖代々の仏壇や墓などを誰が世話していくのか心配です。私が世話する場合は費用がかかるので、その分遺産を多くもらうべきだと思いますが、弟は「きっちり半分に」と譲りません。兄弟で長い間、もめたくはありません。

▼A 仏壇や墓などを「祭祀(さいし)財産」といいます。法律上は、亡くなった人が生前に指定した人、指定がなければ「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者」が継承します。慣習が明らかでなければ、家庭裁判所が継承者を決定します。実際にはまず相続人間でよく話し合い、まとまらない場合に家裁の審判を受けることになります。

祭祀財産は遺産ではなく、相続の対象ではありませんので、あなたが仏壇や墓を引き継ぐとしても相続分は増減しません。ただし、相続人同士で、費用負担などを考慮して遺産分割協議を行うことは可能です。

兄弟なら円満解決が理想ですね。早期解決の基本は当事者がしっかり話し合うこと。家裁の調停や、弁護士会の裁判外紛争解決手続き(ADR)を利用すれば、第三者を交えた話し合いができます。

弁護士会のADRは、経験豊富な弁護士が「あっせん人」として公平な立場で間に入ります。話し合いの日時や場所にも柔軟に対応できます。福岡県弁護士会=092(741)6416=に問い合わせてください。

西日本新聞 5月18日分掲載(真鍋亮平)

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