「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2022年12月14日

貴賓車購入の住民訴訟 行方は

▼Q 山口県知事による2090万円の公用車(貴賓車)購入が11月、地裁の判決で違法とされたそうです。どのような裁判なのですか。

▼A 山口県は2020年、トヨタ自動車の最高級セダン「センチュリー」を購入しました。原告の男性は、財源不足の中、違法な公金の支出だと訴えていました。

自治体の首長は選挙で選ばれます。首長は多数派から認められたことを根拠に、何にどのくらいのお金を使うか、ある程度自由に決めることができます。それに不満でも少数派は従わなくてはなりません。これが多数決の原理です。しかし、選挙で選ばれたとしても、あまりにもめちゃくちゃなお金の使い方は許されません。そのような場合、少数派は違法な支出の是正を自治体に命じるよう、裁判所に求めることができます。今回のケースも含め、このような訴訟は「住民訴訟」と呼ばれます。多数決を原則としつつ、少数派の言い分も聞く仕組みです。

地裁の判決は、他の車種の検討もせずに、最初からセンチュリーに決めて購入したのは知事の裁量権の範囲を逸脱し違法だと認定。購入費全額の賠償を知事に請求するよう山口県に命じました。その後、山口県は高裁に控訴しています。

住民訴訟の原告は、勝訴しても自分が得するわけではありません。公益のために裁判をしています。一方の首長も、首長としての職責で行った以上、最後まで主張を尽くして裁判所の判断を仰ぐ姿勢になります。このため、住民訴訟は最高裁まで進むことが多いです。今回の裁判も、決着は最高裁ではないでしょうか。

西日本新聞 12月14日分掲載(角倉潔)

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