「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2020年2月5日

安易に保釈しすぎでは

▼Q 最近、保釈中に被告人が逃げたという報道を目にします。保釈が安易に認められ過ぎているのではないでしょうか。

▼A 被疑者(容疑者)や被告人について、証拠隠滅や逃亡の具体的な恐れがある場合に、裁判所は「勾留」という身体拘束手続きを認めることがあります。裁判で有罪か無罪か決まるまでの間、身柄を拘置所などで拘束するのです。

一方で、被告人は「有罪判決が確定するまでは無罪」と推定されているのに、拘束が長く続くと、家族や仕事に大きな影響が生じ、社会復帰を困難にする恐れがあります。そこで、起訴された後は、住居制限や保証金の納付などを条件に、判決まで暫定的に拘束を解くのが保釈制度です。

日本は諸外国に比べて被告人の勾留割合が高く、保釈率が低いといわれています。1975年ごろは50%以上だった保釈率が、2003年には13%以下にまで下がりました。この状況が見直され、この数年は30%を超えています。

保釈条件を守らなかったり逃亡したりすると保釈が取り消され、保証金も没収される場合がありますが、取り消された人の割合はこの30年間は毎年1%以下でした。逃亡はニュースでも大きく取り上げられるので目立ちますが、実際に逃げる人の割合は低いのです。保釈条件を守らない1人のために保釈の判断基準を厳しくすれば、きちんと条件を守る人の身柄拘束も続きかねません。

こうした事情を考えれば、決して安易に認められ過ぎているとはいえません。

西日本新聞 2月5日分掲載(甲木真哉)

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