「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2022年6月1日

突然裁判を起こされたら?

▼Q 裁判所から突然、「訴状」が届きました。原告は私の上司の妻で、私とその上司が不倫しているので300万円を支払えと書いてあります。全くの言いがかりです。どうすればいいですか。

▼A 訴えの内容が事実無根でも裁判を起こすことはできます。裁判所としては内容が事実かどうかは裁判をしないと分かりませんので形式さえ整っていれば訴状を受け付け、被告に送達します。ご相談のケースはこの段階です。なので慌てる必要はありません。

送達された訴状には、裁判の第1回期日を書いた「呼出状」が同封されます。通常、反論の準備期間として1カ月以上先に設定されますので、その間に答弁書を提出します。裁判は1回では終わりませんから、答弁書で全てを細かく反論する必要はありません。まずは原告の主張のどこが正しくて、どこが正しくないか指摘します。

ご相談のケースでは、あなたと上司に男女の関係はない、不倫を行ったとされる日時にその場所に行かなかった、などの反論が考えられます。裁判所は双方の主張を聞き、必要に応じて証拠の提出を求め、最終的にどちらが正しいか判断して判決を言い渡します。

訴状が届いた段階で弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は同様の事例を参考に、どう反論してどんな証拠を出すべきかなどを助言し、代理人を受任した場合の費用の見積もりも示します。正式に依頼するかどうかはそれらを聞いてから決めて構いません。相談するだけでも不安はずいぶん軽くなりますよ。

西日本新聞 6月1日分掲載(角倉潔)

目次