「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2017年8月2日

19歳が万引、処分は大人と同じになる?

▼Q 19歳の息子が万引で逮捕されました。ニュースで選挙以外でも18歳から大人として扱われるようになると耳にしました。犯罪の場合も19歳は大人として扱われるのですか。

▼A 現在、20歳未満の少年犯罪については少年法が適用されます。

少年は心身共に成長途中で未熟な面があるので、少年法は刑罰により懲らしめるというより、教育による立ち直りを期待して、非行に対する処分を決めています。

手続き的には、逮捕された後の身柄の拘束(勾留)が原則10日間というのは、大人も少年も同じです。

ただ大人の場合、勾留の後、軽微な事件なら、被害弁償などをすれば不起訴となることもあります。

一方少年は、どんなに軽微な事件でも、すべて家庭裁判所に送致され、調査官が非行の背景を調査したり、少年鑑別所で本人の資質を調べたりします。非行の背景を理解しなければ教育できないからです。

こうした調査結果を踏まえ、保護観察や少年院送致などの処分が決まります。重大事件では大人と同じ裁判を受ける場合もあります。

現在、少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げる議論が進んでいます。実際に引き下げられれば、19歳も大人と同じ扱いになり、立ち直りの機会が失われるおそれがあります。

5日には福岡市・天神で、少年法見直し問題を考えるシンポジウムが開かれます。問い合わせは主催の福岡県弁護士会の電話=092(741)6416。

西日本新聞 8月2日分掲載(楠田瑛介)

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