「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2025年1月30日

車の「経済的全損」とは?

▼Q 車の運転中に追突事故に遭いました。修理費50万円が賠償されると思っていたら、相手方の保険会社から「経済的全損」なので賠償額は30万円と言われました。「経済的全損」とは何ですか。

▼A 相手方の保険会社は、あなたの車の時価額を30万円と評価して賠償額を提示しているのでしょう。一般に、修理費が時価額より高い状態を「経済的全損」と言います。

「全損」とは本来、損傷がひどくて修理自体が不可能な状態のことです(「物理的全損」と言います)。これに対し「経済的全損」は、修理自体は可能でも、修理費の方が高いことによって時価額が全て損なわれたとして「全損」と考えるものです。

被害者が事故前より利益を得るのは行き過ぎですから、「経済的全損」の考え方自体は妥当でしょう。実務的にも大勢の考え方です。問題はその当てはめです。

今回の場合、30万円という時価額はあくまでも相手方の保険会社の評価です。評価額が40万円になれば、賠償額も40万円になります。車の時価評価の方法はいろいろあり、賠償交渉の中で評価額が変わることはよくあります。また、時価額だけでなく買替諸費用なども請求でき、時価額の賠償を受けた上で差額を自己負担して修理する方法もあります。

このように「経済的全損」の場合の賠償交渉は複雑です。福岡県弁護士会では交通事故無料法律相談を行っています。ナビダイヤル=(0570)783552(なやみここに)=で予約できます。

西日本新聞 1月30日分掲載(桑田剛旗)

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