「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2013年5月15日

再審の条件、日本は厳しく

▼Q 最近のニュースで「再審」という言葉をよく聞きます。「再審の結果、無罪になった」とか「再審請求をする」とか。詳しく教えてください。

▼A 再審とは一度確定した裁判をやり直す手続きです。裁判では証拠に基づいて真実を明らかにする努力がされますが、間違いが生じることはあり得ます。法律では、証拠が偽造だったり、新しい証拠が見つかったりした場合、もう一度裁判を受けることを認めています。

しかし日本には、その準備のために捜査で集めた証拠を見たり、有罪の根拠となったDNA鑑定をやり直させたりする制度はありません。真犯人が現れるような特別な場合を除き、再審の条件を整えるのはとても難しく、時間もかかるのが現状です。

一方で、科学技術の発達により、DNA型の再鑑定で有罪とされた人が本当に犯人かどうか、容易に判断できる場合も生じてきています。

米国では誤判救済活動が展開され、DNA型の再鑑定により昨年6月現在で、死刑囚を含め292人が釈放されたと報告されています。そして、冤罪(えんざい)事件のあまりの多さに、DNA型の再鑑定を受ける権利を保障する立法(イノセンス・プロテクション・アクト)などの制度改革が実現しました。

日本でも近年、DNA鑑定が重要な証拠とされた足利事件などが再審で無罪となりました。しかし、DNA型の再鑑定を権利として保障する制度や、捜査段階で収集された証拠を見られる制度はできていません。

無実の人が有罪とされるような正義に反する状況は変えていかなければなりません。

◆福岡県弁護士会の相談窓口案内=(0570)783552(なやみここに)

西日本新聞 5月15日分掲載(高平奇恵)

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