「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2023年1月25日

「送り付け商法」にご注意

▼Q 先日、以前利用したカニの通販業者から電話があり、「売り上げが減り困っている。支援のつもりで買ってほしい」と言われました。「考えておきます」と答えたところ、後日カニが届き、私が知らないうちに家族が半分食べてしまいました。請求書が同封されていましたが、支払わないといけないですか。

▼A これは商品を一方的に送り付ける「送り付け商法」と呼ばれるものです。新型コロナの影響による支援などを口実にするものが目立ち、この数年急増しています。

カニの購入契約はあなたが承諾しないと成立しません。「考えておきます」では契約の承諾にはなりません。商品が送られてきたとしても、契約が成立していませんから、代金の支払い義務はありません。

カニを返品する必要もありません。2021年に特定商取引法が改正され、販売目的で送り付けられた商品は返品不要となりました。ご相談のケースのように食べてしまっていても問題はありません。代金も払わないのに食べていいのかと思われるかもしれませんが、顧客の親切心を利用するような商法を行った業者は自業自得だと考えられています。

請求書は捨ててもよいのですが、業者名や連絡先の控えとして、しばらく保管しておきましょう。業者から電話がかかってきたら、支払い義務はないはずだと断りましょう。

なお、実際に多いのは代金引換方式です。この場合、支払った代金の返金を求める形になるので、業者に開き直られると、返金交渉が難しくなります。心当たりのない代金引換の荷物は受け取らないようにしましょう。

西日本新聞 1月25日分掲載(川渕春花)

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