「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2019年6月19日

年5日の有休取得 会社の義務に

▼Q 小さな会社を経営しています。今年4月から、従業員に年次有給休暇を取得させることが会社に義務付けられたと聞きました。詳しく教えてください。

▼A 会社は原則、労働者が請求する時季に年次有給休暇を与える必要があります。しかし同僚への気兼ねや請求することへのためらいなどから、労働者側からの積極的な有給休暇の取得が進んでいませんでした。そこで労働基準法が改正され、4月から、会社は法定の有給休暇付与日数が10日以上の全ての労働者に対し、毎年5日、有給休暇を確実に取得させることが義務付けられました。

取得する方法として、労働者が会社に申し出るという従来の形に加え、会社が労働者ごとに年5日は有給休暇取得の時季を指定するという新しい形が導入されました。時季の指定を行う際は、会社が労働者に取得時季についての意見を聴き、その意見を尊重することが必要です。既に5日以上の有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、時季の指定ができません。

今回の改正に伴い、会社は、労働者ごとに有給休暇管理簿を作成して3年間保存し、時季指定を行う場合は就業規則への記載が必要になります。就業規則に記載する際は、厚生労働省がモデル就業規則(2019年3月版)を公表しているので、参考にしてください。時季指定義務や就業規則への規定義務に違反した場合、30万円以下の罰金などの罰則も設けられたので、注意が必要です。

西日本新聞 6月19日分掲載(塙愛恵)

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