「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2020年8月19日

会食禁止 守らないといけないの

▼Q 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、会社から家族以外の人との「会食禁止」指示が出ました。そこまで管理されなくてはならないのでしょうか。

▼A 労働者の業務時間外の行動についても、企業秩序の維持確保の必要性が認められれば、規制の対象とし、違反者を懲戒できるとされています。もしあなたがコロナウイルスに感染し、他の社員にも感染が広がれば、会社の業務がストップしかねません。このような事態を防ぐための規制は、企業秩序の維持確保に必要な規制と認められる可能性があります。

しかし、あなたにとっては、必要以上に私生活に介入されるのは不本意でしょう。また、会食はしたが感染はしておらず、会社に実害を与えていないのに、懲戒解雇のような重い処分を受けた場合は、処分としても行き過ぎだと思われます。

このように、会社と労働者双方の立場は違います。会食禁止の必要性も、そのバランスの中で考えなくてはなりません。実際の裁判では、その目的、内容、社会状況、会社の状況、処分の程度などさまざまな事情が考慮されます。完全テレワークで社員の接触がほぼない場合はどうでしょうか。病院や老人ホームで働いている場合はどうでしょうか。事情が変われば結論も変わり得ます。

福岡県弁護士会では、身近な問題から政策まで物事を多面的に検討する力を養う「法教育」に力を入れています。さまざまな取り組みを行っておりますので、ぜひ弁護士会のホームページをのぞいてみてください。

西日本新聞 8月19日分掲載(山室卓也)

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