「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2019年10月16日

子どもの泣き声が・・・虐待かも

▼Q 小さな子どもがいる家から頻繁に泣き声がします。虐待じゃないかと心配しています。

▼A 児童相談所(児相)に連絡をしてください。児童福祉法25条は、虐待を受けたと思われる子どもを発見したら市町村や児相に通告しなければならない、と国民の義務を定めています。罰則があるわけではありませんが、万一の場合、子どもの命を救うのは近隣からの情報提供かもしれません。

方法は、電話でも手紙でも構いません。全国共通ダイヤル「189」(いちはやく)にかければ地元の児相につながります。匿名でもできますし、誰が通告したか周囲に知られることはありません。

児相は、通告の内容から重大性や緊急性を判断し、家庭訪問などをして本当に虐待の疑いがあるか見極めます。その結果、夜泣きがひどいだけ、などということもあります。万一、虐待の疑いが強い場合は、必要な支援をします。

ただ、親子の数だけ適した親子関係の築き方があります。児相は全てのケースで、「一時保護」という親子を引き離す措置を取るわけではありません。虐待の程度がそれほどひどくなく、親から引き離すことで、子どもの心を著しく傷つけ、親子関係の修復が逆に難しくなる恐れがあるときは、在宅での支援になることもあります。

一時保護になった場合も、いつか親子が一緒に安心して暮らせる日が来るよう援助を行う、それが児相の役割です。子どもたちの未来を守りたい。その願いは、親も児相も地域の人たちも同じです。

西日本新聞 10月16日分掲載(白水由布子)

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