「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2019年8月28日

大雨で会社が休業、給料は?

▼Q 先日の大雨で勤務先が水に漬かってしまい、長期で休業することになりました。その間の給料はどうなるのでしょうか。

▼A 労働契約は、労働者が労働を提供することに対して使用者が給与を支払う合意です。使用者に責任(帰責事由)がなく労働できなかったときは、労働者は給与を受け取ることはできないとされています。

大雨などの災害で、勤務場所が損壊するなどして休業しなければならなくなった場合は、不可抗力によるものでしょうから、使用者に責任があるとはいえず、給与を受け取ることはできません。また休業手当についても、使用者の責任による休業の場合にのみ支給されるものなので、災害の場合は受け取りは難しいでしょう。

一方で、災害で事業を縮小せざるを得なくなった事業者が、一時的に労働者を休ませる場合は、雇用保険と雇用調整助成金を利用できるケースがあります。まず、災害が激甚災害に指定されると、休業で給与を受け取れなくなった方は、雇用保険の特例により離職していなくても雇用保険の失業給付を受けることができます。次に、災害に伴う経済的な理由で休業せざるを得なくなった場合は、雇用調整助成金として、事業者が休業手当等の一部助成を受けられることがあり、労働者はこれによって金銭を受け取ることができます。

このように災害時は平時とは異なる公的な支援制度があります。ハローワークや労働局などの情報に注目しておくといいでしょう。

西日本新聞 8月28日分掲載(松尾朋)

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