「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2017年6月21日

後部座席のシートベルト非着用は過失!

▼Q タクシーの後部座席に乗っていたとき、運転手が事故を起こして車が大破、私は助手席後部に膝をぶつけて骨折してしまいました。シートベルトはしていませんでした。これは私の過失になるのでしょうか。

▼A 後部座席でシートベルトを着用していなかったことが過失に当たると判断され、あなたのけがや後遺障害に対する損害賠償額が減額(過失相殺)される可能性があります。もちろん、事故状況やけがが生じた原因、けがの程度などさまざまな事情を考慮の上ですが、これは一般道でも高速道でも同様です。

2008年の道交法改正で後部座席もシートベルト着用が義務化されました。以前は努力義務だったこともあり、裁判でも過失を認めないケースが多かったのですが、法改正後は、着用しなかったことで結果的にけがが重くなったことを理由に、過失相殺する裁判例が大多数です。

具体的には、ベルトを着用していた同乗者と比べ、着用していなかった被害者のけがが重いというような事故の裁判例では、おおむね5~10%程度の過失割合を認める傾向にあるようです。この先、後部座席でのベルト着用がもっと普及すれば、さらに重い過失割合が認められる可能性もあります。

重傷事故の場合、10%の減額でも賠償金にして数百万円の差になってきます。何より、ちょっとした手間で悲劇が防げるのであれば、後部座席でも必ずシートベルトを着用すべきでしょう。

西日本新聞 6月21日分掲載(桜井正弘)

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