「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2022年5月11日

隣家から延焼、保険金は?

▼Q テレビで火事のニュースをよく目にします。もし自分の家が燃えてしまった場合、保険金はきちんと出るのでしょうか。

▼A 保険金が支払われるかどうかは、火事がどこで起きたか、保険に入っているのが誰か、によって変わってきます。

例えば、ご自身がストーブの火を消し忘れて火事を起こし、自宅が燃えてしまった場合は、火災保険に加入していれば保険金が支払われます。他の家でストーブの消し忘れによる火事が発生し、自分の家まで延焼してしまった場合も、ご自身が火災保険に加入していれば保険金が支払われます。

他の家が起こした火事なのだから、火元の家にお金を請求できないのか-と思われるかもしれません。しかし日本では木造建築物が密集しており、火災が起きると延焼する可能性も高く、火元となった家が全ての損害を賠償することは困難です。そこで、失火責任法で、失火の原因が「重大な過失」によるものでない場合に、火元は損害賠償責任を負わないとされています。なお、重大な過失とは、少しでも注意すれば問題が起きることを予見し回避できたのにこれをしなかったという、著しい注意欠如の状態をいいます。

したがって、火災保険に加入していないと、他の家の失火で自宅が燃えても保険金を受け取れない可能性があります。また、賃貸住宅の場合、物件所有者の加入する火災保険は、入居者の家財までは保証しないことが多いです。この場合も、ご自身が火災保険に加入していれば保険金が支払われます。

西日本新聞 5月11日分掲載(出光良彰)

目次