「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2025年5月15日

「いじめ被害」の救済手段

▼Q 学校でいじめを受けていて、誰かに助けてもらいたいです。どこに相談すれば良いですか。

▼A まず、学校や教育委員会に対応を申し入れることが考えられます。しかし、十分に対応してくれない場合もあります。そこで、各地の弁護士会に人権救済申立をされてみてはいかがでしょうか。

人権救済申立は、人権侵害が認められた場合に、弁護士会から要望、勧告、警告などの措置をとる手続きです。マスコミに公表することもあります。申立に費用はかかりません。申立を受けた弁護士会は調査を行うかどうか決定します。調査が開始されると、弁護士が調査委員となり、あなたや学校からの聞き取り、資料収集などをし、事実を確認します。

裁判という方法もありますが、裁判では主に損害賠償の問題になってしまいます。人権救済申立は、関係者からよく話を聞き、事案に応じた解決案や提言ができることから、実際の解決に役立つという長所があります。いじめ事案の他、ジェンダー、少数民族問題のような事案の解決にも適しています。

もっとも、人権擁護委員会の調査に強制力はありません。関係者が非協力的な場合、調査には限界があります。この点、各国には強い調査権限を持つ「国内人権機関」があり、日本弁護士連合会は日本での「国内人権機関」創設に向けて活動しています。

福岡県弁護士会では5月23日に「国内人権機関」を巡るシンポジウムを開きます。措置入院など精神科医療の問題について、人権機関が果たす役割を考えます。参加無料。詳細は県弁護士会のホームページをご覧ください。

西日本新聞 5月15日分掲載(塩山乱)

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