「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2024年9月19日

戸籍の性別変更 手術必要?

▼Q 私はトランスジェンダーです。戸籍上は男性ですが、女性として生活しています。戸籍上の性別も女性に変えるにはどうしたらよいですか。

▼A 戸籍上の性別変更には、家庭裁判所で「性別変更の審判」を受けなくてはなりません。それには医師による性同一性障害の診断などが必要です。

従来は、生殖能力をなくしていることや、性器の外観をなりたい性別に近づけることも求められました。これには「性別適合手術」が必要な場合があり、手術ができない、したくない人の性別変更の道は閉ざされていました。

しかし、最高裁判所は昨年10月、生殖能力がないという要件は憲法違反で無効とする決定をしました。憲法が保障する「意思に反して体を傷つけられない自由」を制約している、と捉えたものです。性器の外観の要件についても、今年7月の広島高裁決定は、憲法違反の疑いがあるとして、手術なしの性別変更を認めました。当事者は戸籍上男性でしたが、手術をしなくてもホルモン治療で女性らしい体形になっており、それで足りるとしたものです。

ただし、性器の外観について広島高裁決定の考え方が確定したわけでなく、最高裁の判断が待たれます。自認する性と法律上の性の不一致に悩む当事者が、手術するか、性別変更を断念するかの二者択一を迫られないためには新たな法整備も必要です。

性別変更を巡る手続きは過渡期にあります。最新の情報を確認してください。福岡県弁護士会ではLGBT無料電話相談を実施しています。匿名相談も可能です。

西日本新聞 9月19日分掲載(田坂幸)

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