「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2022年12月7日

児童虐待を早めに発見

▼Q 保育園の担任です。クラスの男の子の頬が赤かったので理由を聞くと「パパにバチンてされた」と話しました。虐待が心配です。どうしたらよいでしょうか。

▼A 児童虐待防止法は、虐待を受けたと「思われる」児童を発見した者は、「速やかに」市町村や児童相談所に通告しなければならないと定めています。ご相談のケースは「身体的虐待」の可能性があります。

虐待と確信できなくても、虐待を受けたと「思われる」児童を発見した場合、「速やかに」通告する必要があります。児童の安全を第一に考え、通告をためらわせないためです。実際には、まず園長などの責任者に報告して対応することになるでしょう。事実関係や通告時の状況を園内で共有しておくと、関係機関を含めた連携がスムーズになります。

虐待通告を受けた児童相談所は、緊急の会議を開催し、心理士、保健師や弁護士なども交えて、情報を整理して緊急性などを評価し、安全確認の方法や直ちに一時保護をするかどうかを検討します。

なお、同法は通告者を特定できる情報を児童相談所などが漏らすことを禁じていますが、ご相談のケースでは、保育園が通告者だと事実上分かるかもしれません。保護者から不信感をもたれたままだと、今後の支援の妨げになります。保護者に対しては、児童と接する機会の多い保育園には虐待の早期発見義務があることや、子どもの安全を第一に考えて通告をしなければならないことを丁寧に説明し、理解を求めましょう。

「189(いちはやく)」は児童相談所虐待対応ダイヤルです。虐待かも?と思ったらお電話を。

西日本新聞 12月7日分掲載(楠田瑛介)

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