「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2023年3月8日

自然災害の義援金 差し押さえされる?

▼Q 自然災害に遭い、預貯金もないため、義援金を当面の生活費に充てようと考えています。私には借金があるのですが、返済ができなくなったら、義援金が差し押さえられてしまうのでしょうか。

▼A 2021年6月に「自然災害義援金差し押さえ禁止法」が成立・施行され、全ての自然災害の義援金は差し押さえられないようになりました。

この法律が施行される以前は、11年に起きた東日本大震災や16年の熊本地震など、大規模な災害の場合に限って、災害ごとに特別に法律を作って、義援金の差し押さえを禁止してきました。逆に言えば、17年の九州北部豪雨のように、特別に法律が作られなかった災害では、禁止されていませんでした。

ある特定の災害で禁止し、それ以外の災害は禁止しないというのでは、同じ苦しみを抱える被災者の間に不公平を生じさせます。そもそも、義援金は被災者の生活再建などのために支給されるものですから、いくら借金があっても、差し押さえることができるのは不合理ですよね。このような不公平や不合理の解消を図るべく出来たのが、自然災害義援金差し押さえ禁止法です。

なお、この法律で差し押さえできなくなるのは、自治体が集めた義援金です。NPOなどが自分たちで集めて配る、広い意味での義援金は、差し押さえされる可能性があります。ただ、この法律以外にも、被災した方を支援するための法律や制度は多くあります。ご自身での制度利用が難しいと感じたら、弁護士にご相談ください。

西日本新聞 3月8日分掲載(藤田大輝)

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