「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2023年11月29日

DVから逃れて自立したい

▼Q 夫と8歳の子どもの3人で暮らしている専業主婦です。夫のDVがひどく、別居しようと考えています。シェルターに入居して生活保護を受けたいと考えていますが、生活保護の申請をすると夫に居場所を知られないか心配です。

▼A 生活保護法では、申請を受けた自治体が、申請者の「扶養義務者」に経済状況を聞き取り、申請者に経済的な援助を行うことができないか問い合わせるとされています。これを扶養照会と言います。夫は民法上、妻子に対する扶養義務を負っているので、原則夫に対して扶養照会をします。その場合、扶養照会元の自治体に居住していることが夫に知られてしまいます。

そこで、DV被害者については例外を設けています。扶養照会をすると、DV被害者の生命・身体の安全が脅かされ、自立を阻害することになるからです。DVが社会問題化してきたこともあり、一部の自治体では、このような事情が明らかな場合は扶養照会を控える運用が採られています。ご相談のケースでも、夫からDVを受けていることを生活保護申請のときに申告してください。

なお、夫婦関係の「解体」が明白である場合には、夫に収入があっても生活保護を受給できます。夫とは別の世帯と扱われるからです。暴力のほか、夫から生活費をもらえないことなど、夫婦関係が解体していることを具体的に説明してください。

12月6日には全国一斉生活保護ホットラインが開催されます。無料の電話相談です。生活保護全般に関する疑問や不安にお答えします。詳しくは、福岡県弁護士会のホームページをご覧ください。

西日本新聞 11月29日分掲載(北中茂)

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