「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2021年12月1日

借金300万円・・・相続放棄できる?

▼Q 先日、叔父が亡くなりました。身寄りは私だけです。叔父名義の口座に30万円ほどの預金があったので、私が引き出してささやかな葬儀を行いました。ところがその後、叔父には300万円もの借金があることが分かりました。相続放棄はできるのでしょうか。

▼A まず戸籍を調べて相続関係を確認しましょう。叔父さんの親、きょうだいが既に亡くなっているなら、あなたは原則として相続人となります。相続人は、亡くなった人の資産だけでなく負債も相続しますから、300万円の借金も相続します。

いったん相続を承認してしまうと、相続放棄はできません。相続財産を勝手に使うことは相続の承認になるので、あなたが預金を引き出したことが相続の承認にならないか問題になります。

この点、葬儀は遺族が通常行うことなので、相続財産から葬儀費用を支払ってもその後の相続放棄は認められることが多いようです。相談のケースも最低限の葬儀をしたにすぎないようですので、相続放棄が認められる可能性が高いと思います。ともかく、家庭裁判所で相続放棄の手続きだけはしておきましょう。

なお、相続放棄は、自分が相続人だと知った時から原則として3カ月以内にする必要があります。この点にも注意してください。

故人の財産や債務の相続に関しては、葬儀費用の問題も含め、裁判所でも明確な基準が定まっていない部分があります。よく分からないときは、財産や債務に手を付ける前に、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

西日本新聞 12月1日分掲載(諌山佳恵)

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