「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2014年7月2日

残業代、定額もあるが・・・/お茶の間学

▼Q 月給制の会社員です。職場に長時間残って働いても残業代が付きません。雇用主は、給与明細書に記載された定額(3万円)の「精勤手当」が残業代だと言いますが・・・。

▼A 例えば「就業規則などで精勤手当が残業代に相当することが明確にされていない」「残業時間とは無関係の年齢、勤続年数、役職に応じて精勤手当の額が労働者ごとに異なる」などの事情から精勤手当が実質的に残業の対価として支払われていない場合、精勤手当を残業代に充てることはできません。労働者は別途、残業代を請求できます。

また、残業代を定額で支払うこと自体は違法ではありません。しかし、支払った金額(本件は3万円)が労働基準法で定める残業代額(例えば10万円)を下回っていれば、その差額(7万円)を別に残業代として支払う必要があります。

さらに裁判例によると、給与のうち、基本給など通常の賃金と残業代の区分が不明確だったり、定額を超える残業代が発生しているにもかかわらず差額を支払わないことが常態化していたりすると、残業代を定額でもらっていたとしても、全く支払われていないと見なされるケースがあります。こうした場合、労働者は定額に加え、残業代も請求できます。

残業代の定額払いは難しい法律問題を含んでいます。福岡県弁護士会が行っている労働者対象の無料相談=(0570)783552(なやみここに)=をご利用ください。

西日本新聞 7月2日分掲載(西野裕貴)

目次