「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2025年2月6日

死刑制度考える懇話会報告

▼Q 最近、死刑制度についての報告書が公表されたそうですが、どのようなものですか。

▼A 「日本の死刑制度について考える懇話会」が昨年11月、死刑制度についての検討と提言をまとめた報告書を公表しました。同12月には石破茂首相らに手渡しています。

この懇話会は、学者、法律家、国会議員など、さまざまな立場の委員16人が、現行の死刑制度の問題点について議論を重ねてきたものです。報告書では「早急に、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置する」ことを提言しています。

世界的には、死刑制度を廃止した国や、長く死刑執行をしていない事実上の廃止国など、死刑制度廃止の潮流があります。一方、日本では、死刑は被害者遺族の気持ちを考えれば存続して当然であるとか、廃止したら凶悪犯罪が増加してとんでもないことになる、などの反対意見も根強くあります。

しかし、死刑判決は人間が行う裁判ですから、常に誤判や冤罪(えんざい)の可能性があり、それで死刑が執行されれば、取り返しのつかない人権侵害となります。実際に、袴田巌さんは、再審の裁判で死刑判決が誤りだと分かり、昨年10月に無罪が確定しました。もし再審請求をしていなければ、既に死刑が執行されていたでしょう。

その直後に今回の報告書が公表されました。これを機に、私たちも死刑制度について真剣に考えていきたいものです。

西日本新聞 2月6日分掲載(西理)

目次