「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2018年9月19日

海外から子どもを連れ帰ったら・・・

▼Q 海外で暮らしていましたが、夫と不仲になり、10歳の子どもを連れて日本に帰国したところ、日本の裁判所から子どもを返還するよう命じられました。子どもは、私と日本で暮らしたいと言っています。それでも従わなければいけないのでしょうか。

▼A 国境を越えた子どもの連れ去りについては「ハーグ条約」があります。日本では、ハーグ条約に基づいて国内ルールを定めた法律が2014年に施行されました。あなたが受けた命令は、この法律を根拠としています。

あなたがこのまま命令に従わない場合、裁判所から金銭の支払いを命じられたり、執行官が自宅にやって来て子どもの引き渡しを求めたりする可能性があります。

また、夫から人身保護請求の裁判(不法な身体拘束を解くことを求める裁判)を起こされる可能性もあります。この裁判では、いくら子どもが「お母さんと日本で暮らしたい」と話しても、裁判所が子どもを夫に引き渡すよう命じる可能性がゼロではありません。

実際に、子どもが母親と暮らしたいと言っている事実があるのに、「養育している母親が、子どもの意思決定に対して不当な心理的影響を及ぼしている」と判断され、夫へ引き渡す判決が出たことがあります。人身保護請求の裁判に応じなければ、刑事罰の対象になるので注意が必要です。

適切な対応をするためには、法的な知識が不可欠です。1人で悩まず、お近くの弁護士まで相談してください。

西日本新聞 9月19日分掲載(尾畠弘典)

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