「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2017年2月15日

逮捕・起訴された夫、釈放は可能?

▼Q 居酒屋を経営する夫が、酒に酔った客とけんかして大けがをさせ、傷害罪で逮捕・起訴されました。夫には持病がある上、夫がいないと商売もできないので早く出てきてほしいです。

▼A 起訴された被告人については、保釈金の納付などを条件に、身柄の拘束を解く保釈という制度があります。対象は被告人のみで、起訴されていない被疑者(容疑者)は保釈を請求できません。

裁判所は原則、保釈請求した被告人を釈放しなければなりません(権利保釈)。しかし法定刑の刑期の下限が1年以上の懲役に当たる罪を犯した疑いがあるなど、一定の条件に当たるときは認められません。ただ権利保釈が認められなくても、裁判所の判断で保釈が認められることがあります(裁量保釈)。裁量保釈は「身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上または防御の準備上の不利益の程度その他の事情」を考慮して判断されます。本件は、夫に持病があり、居酒屋経営の事情があるので、認められる可能性があります。

保釈決定後は、保釈金を支払わなければなりませんが、被告人が裁判に出頭して判決を受けると戻ってきます。裁判に出頭しなかったり、保釈条件を守らなかったりして保釈が取り消された場合は没収されます。

保釈金を準備できなくても、全国弁護士協同組合連合会による保釈保証書発行事業などにより、保釈金の支払いに代えることができる可能性があります。さらに詳しい内容は弁護士にご相談ください。

西日本新聞 2月15日分掲載(生野悟朗)

目次