「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2022年7月13日

上司のセクハラ発言にうんざり

▼Q 職場の上司に以前から「結婚しないのか」と聞かれてうっとうしく思っていましたが、先日「もしかしてソッチ系か」と言われました。どうにかなりませんか。

▼A 結婚するかどうかは個人の事柄であり他人が口出すこと自体問題です。さらに「ソッチ系」という発言は同性愛者を蔑視しており、言われた人が同性愛者かどうかにかかわらず深刻な人権侵害です。

上司の発言はセクシュアルハラスメント(セクハラ)に当たります。セクハラとは職場において労働者の意に反する性的言動が行われ、職場環境が害されることです。セクハラは異性間に限りません。男女雇用機会均等法は事業主に対し、労働者からセクハラ問題の相談があれば応じ、必要な措置を講じるよう義務づけています。

上司の発言は「結婚するのが当たり前」という価値観を押し付け、「ソッチ系」という表現で同性愛者を異常なものとしてさげすんでいます。まずは職場のセクハラ問題の担当窓口に相談し、対応が不十分なら行政機関や弁護士に相談しましょう。

セクハラ発言は周囲で聞く人々も不快に感じたり傷つけたりします。その多くは知識不足が背景にあると思われます。男女雇用機会均等法はセクハラに関する研修などを実施することも事業主の責務としています。誰もが快適な環境づくりのため、職場で勉強会を開いてみませんか。

福岡県弁護士会では毎月第2木曜日と第4土曜日の正午~午後4時、LGBT(性的少数者)向けの電話相談を実施しています。匿名の相談も受け付けます。 

西日本新聞 7月13日分掲載(石井謙一)

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