「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2018年8月29日

豪雨で隣家の壁が壊れてきたら

▼Q 7月の西日本豪雨で隣家の塀が壊れ、私の敷地に残骸があります。隣の所有物なので、勝手に片付けていいのかためらっています。被害を受けているお宅に、片付けをお願いするのも気が引けます。何か良い方法はありませんか。

▼A 民法では、塀などの工作物の設置・保存の瑕疵(かし)(欠陥)により、他人に損害が生じたときは、所有者が責任を負います。そのため、塀の設置方法や強度などに何らかの瑕疵が認められれば、隣家に損害賠償を求めることができます。隣家の壁の倒壊を、あなたの敷地所有権を妨害するものとみなして、撤去や修繕を求めることもできます。

とはいえ隣家とは今後のお付き合いもあり、穏便に、早く解決したいというお気持ちがあると思います。ただ撤去や修繕方法、時期など、決めることは多岐にわたり、当事者だけで解決するのは簡単ではありません。

福岡県弁護士会は、西日本豪雨や昨年7月の九州豪雨にまつわる民事上のトラブルについて、弁護士が双方の言い分を聞き、訴訟ではなく話し合いで迅速に円満解決を図る調停制度(災害ADR)を行っています。災害ADRは、東日本大震災や熊本地震でも多く活用されました。申し立て手数料は無料です。

またADRにかかわらず、二つの豪雨被害について面談による無料法律相談も17カ所で行っています。電話=(0570)783552=で申し込んでください。

西日本新聞 8月29日分掲載(仁田畑莉加)

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