「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2013年5月8日

「ほう!」な話スペシャル版-消費者問題 どう対処

金銭や契約上のトラブルで、弱い立場にある消費者が被害に遭うケースが少なくない。生活面で「『ほう!』な話」を担当する福岡県弁護士会に所属する3人に、最近目立つ消費者問題の情報や対処法について解説してもらった。

●互助会解約金 「平均的損害」以内で

【Q】冠婚葬祭互助会から退会しようとしたら、積立金から「解約金」を差し引いた額しか返らないらしく、迷っています。

【A】将来の結婚式や葬式に備えて月掛け金を前払いで積み立てる冠婚葬祭互助会。解約金は加入時に契約した「約款」の条項に基づき、積立残高から差し引かれます。かといって、何でも支払わなければならないわけではありません。

消費者契約法は、解約時に差し引かれる違約金などについて、解約に伴って当該事業者に生じる「平均的な損害」を超えた金額を差し引く条項は無効と定めています。

最近、互助会の定める解約金条項の一部を無効とする高裁判決が出ました。平均的損害を超えると判断されたのです。質問のケースも、解約金の計算根拠を示すよう業者に求め、何の費用が含まれるか確認した上で、解約するか慎重に検討しましょう。

業者側の説明や対応に納得がいかなければ、消費生活センターや弁護士に相談を。団体(NPO法人・消費者支援機構福岡など)で約款の使用を差し止める制度もあります。情報提供だけでも結構です。

(清水さやか)

●ネット被害 責任追及に証拠必要

【Q】飲食店を経営しています。インターネットの掲示板に名指しで「あの店の食材に有毒物質が含まれている」と書き込まれ、売り上げが落ちて困っています。

【A】質問のような書き込みは、対象者の社会的評価を下げるものです。内容が虚偽なら、民事上の責任(損害賠償責任)を追及でき、刑事事件として名誉毀損(きそん)や信用毀損、業務妨害の罪で被害届も出せます。

もっとも内容が真実で、書き込んだ側が証明できれば責任は追及できません。真実と証明できなくても、確実な資料や根拠に基づき、そうだと信じる相当な理由がある場合も、責任は問えないことになります。

単なる嫌がらせ目的や人のうわさ程度の不確実な情報を信じただけで、致命的ともいえる書き込みをした責任は追及できます。ただし、そもそも書き込みをした人物が誰か特定できなければ、法的にはどうしようもないのが現実です。

サイトを運営する管理人に法的手続きを通じて照会しても特定が困難なケースが多く、匿名性ゆえに解決が非常に難しい分野です。専らモラルに期待することしかできないのが現状です。

(向原栄大朗)

●劇場型勧誘 詐欺的手口さまざま

【Q】複数の業者から電話で「A社のリゾート会員権を高額で買い取りたい」と持ちかけられ、タイミングよくA社の立派なパンフレットも届いたので購入しました。ところが、買い取ってくれるはずの業者と連絡が取れなくなってしまいました。

【A】「劇場型勧誘」といわれる詐欺的なもうけ話の典型例です。リゾート施設が実在しなかったり、第三者が無断で名称を使用したりした可能性があります。複数の人物が巧みに役割を演じつつ、まるで芝居のようにもうけ話を何度も勧誘することで消費者を次第に信じさせる手口です。最初から相手にしないことが重要です。

ほかにも「名前が被害者リストに載っているから消した方がいい」「昔の投資詐欺の損害を取り戻してあげる」などと勧誘する手口もあります。「東北の震災の影響で病院が不足しているから建設資金になる」などさまざまな手口があり、劇場型勧誘と組み合わせて使われることもあります。

支払ってしまったら、すぐに弁護士会や消費生活センターに相談を。簡単ではありませんが、早い段階に対処することで取り返せる場合もあります。 

(是枝秀幸)

福岡県弁護士会の相談窓口 (0570)783552

西日本新聞 5月8日分掲載

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