「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2019年12月11日

酒をやめず「死にたい」と言う息子

▼Q 息子が毎日酒を飲むのをやめず、「死にたい」と口にします。仕事も辞めて引きこもってしまい、同居する私も翻弄(ほんろう)されています。どうしたらいいでしょう。

▼A 息子さんはアルコール依存症かもしれません。できるだけ早く精神科の病院に相談してください。アルコール依存症であれば、自力で酒をやめるのは難しく、家族が無理にやめさせようとしても、自殺したいという気持ちが高まる可能性があるので危険です。

さまざまな調査で、この病気はうつ病を併発しやすく、自殺とも関連があると指摘されています。通院や入院で治療を続けながら、酒を飲まない「断酒」期間を延ばして回復を図ることが大切です。

また治療と並行して、「断酒会」などのアルコール依存症患者の自助グループに参加するのも有効です。断酒会とは、患者が集い、互いに酒で失敗した体験を打ち明け、支え合いながら回復を目指す場です。参加し語らうことで、死にたい気持ちが和らいでいった、との声もあるようです。

依存症はさまざまな社会的問題も引き起こします。職を失い、生活費や酒代のための借金がかさむと、自己破産などの債務整理をする必要があるかもしません。うそや暴力、借金の肩代わりなどで、家族も巻き込まれかねず、別居や離婚を考える必要が出てくるかもしれません。法的手続きが求められることもあるでしょう。

弁護士も、精神科医や精神保健福祉士の協力を得て依存症について学んでいます。
心配なときはご相談ください。

西日本新聞 12月11日分掲載(富永慎太朗)

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