「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2016年4月20日

試用期間 簡単に解雇されず

▼Q 今春、新卒の正社員として就職したのですが、3カ月は試用期間と言われました。試用期間中に適性や能力がないと評価されれば、本採用されない場合もあるとのこと。私はアルバイト経験も乏しく、すぐ解雇されるのではと不安です。

▼A 試用期間は一般的に、正社員として入社後2~6カ月程度と決められていることが多いです。単なるお試し期間ではないので、相性が合わないといった理由だけで解雇できるわけではありません。

とはいえ、裁判例では、採否決定時点で判明していなかった適性や能力の不足などが、試用期間中に判明した場合、通常よりも広く解雇(本採用拒否)できるとされています。そういう意味で試用期間中は解雇が認められやすいともいえます。

適性不足などの例として「遅刻・欠勤を繰り返す」「指示に従わない」「同僚と口論する」「暴言を吐く」といった問題行動が見られます。経歴詐称も本採用拒否の理由になり得ます。

ただし、適性不足などがあっても、指導や教育で改善できそうなときは解雇が許されない傾向にあります。経歴詐称も重大でなければ解雇までは認められないようです。少し難しく言うと、試用期間中の解雇にも客観的・合理的な理由が必要です。

試用期間中になかなか習熟度が上がらなかったり、同期入社の人と比べて低く評価されたりしても、それだけで簡単に解雇されることはありません。そんなに不安がらなくても大丈夫です。

西日本新聞 4月20日分掲載(本江嘉将)

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