「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2023年4月5日

介護職員へのハラスメント防ごう

▼Q 介護施設の施設長をしています。最近、利用者やその家族からの暴言、暴力などを受けたという職員の相談が増えました。施設としてどう対応すべきですか。

▼A 認知症などが原因の場合は別ですが、ご相談のような利用者らの行為はハラスメントにあたります。介護の仕事上、職員が利用者と身体的に接触することが多く、また、利用者らが介護サービスに過度な期待を抱いていることがあるため、職員がハラスメントを受けることが多いと言われています。2019年に実施された厚生労働省の調査では、介護施設職員の2人に1人は、利用者からハラスメントを受けたことがあると回答しています。

ハラスメントを受けた職員は、精神的・身体的に大きく傷つき、退職することも考えられます。一番の原因は利用者らにありますが、施設も職員に対して安全配慮義務を負っており、職員を守る義務があります。

職員がハラスメントの被害を受けた場合、まずは、被害を受けた職員から詳しく事情を聴き記録に残すことが大事です。その上で、被害を受けた職員を担当から交代することを検討します。そして、施設の責任者、利用者やその家族、ケアマネジャー、地域包括支援センターの担当者などで会議を開き、ハラスメントに対して厳重注意を行い、改善されない場合はサービス提供が難しくなることを説明するとよいでしょう。

ハラスメントに対しては、職員が一人で抱え込まずに組織として対応することが必要です。職員間で情報共有しやすい環境をつくり、ハラスメントに関する研修などを定期的に行うことも重要です。

西日本新聞 4月5日分掲載(森竹卓郎)

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