「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2020年10月28日

国会でオンライン審議できる?

▼Q 新型コロナウイルスの感染拡大で、再び緊急事態宣言が出された場合、オンラインで国会審議はできるのでしょうか。

▼A 先月の西日本新聞に、地方議会でオンライン活用が徐々に広がっているとの記事がありました。総務省は、オンラインでの議会審議について、委員会は条例や規則改正で可能だが、本会議への出席は「現に議場にいることと解されている」として、認められないとの見解を示したそうです。

国会については、憲法56条1項に「総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き決議をすることができない」とあり、オンライン参加が「出席」と認められるかどうかが問題となります。

国会は単なる質疑応答の場ではなく、政府の政策執行を厳しく監視するとともに、国政の課題を浮き彫りにする真剣な議論が期待されていることを重視し、議場に出席しないと「出席」とは言えないという考えもあります。英国議会がテレビ会議を行ったところ、静かな議場で質問と答弁の声が響く、これまでにない光景が見られたそうです。

一方、オンライン出席は、ウイルスに感染するリスクが低いというメリットもあります。議場にいない議員も審議に参加して表決し、その様子が公開されるという条件を満たせば、「出席」と考えて差し支えないという指摘もあります。

憲法上の解釈はいずれもあり得ると考えられます。重要なのは、国会の職務のあり方を決めるのは、最終的には私たち国民だ、という視点です。

西日本新聞 10月28日分掲載(井上茉彩)

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