「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2018年8月15日

ご近所トラブルは話し合いで

▼Q マンションの上の階に住む子どもの跳びはねる音に悩んでいます。分譲なので転居するわけにもいきません。解決方法はないでしょうか。

▼A マンションは上下階や隣の住民との距離が近いので、騒音に関する悩みが多く寄せられます。対応策の一つとして、裁判所に訴訟を起こし、騒音により精神的苦痛を被ったとして慰謝料請求や、原因行為の差止請求を行うことが考えられます。しかし騒音の程度が隣人として一般的に我慢すべき限度、すなわち「受忍限度」を超えていることを立証する必要があり、簡単ではありません。訴訟にまで至ってしまうと、今後のご近所付き合いが難しくなることもあります。

できるだけ話し合いによる解決を目指したいものです。ただ、当事者だけで話し合いがうまくいくか、心配もあると思います。

弁護士会の紛争解決センターが行っているADRという手続きはいかがでしょうか。ADRとは、訴訟によらない紛争の解決手法のことを指し、中立的な第三者(あっせん人)を間に立てて、当事者同士が話し合いを行うものです。

ADRでは、弁護士があっせん人として関わるので解決の指針が立てやすく、何より訴訟と違って角の立たない、お互いが歩み寄って納得した上での解決が期待できます。訴訟より早期に、費用も安く済む場合が多いこともメリットです。弁護士の代理人を立てずに、ご自身で話し合いをされることも可能です。

西日本新聞 8月15日分掲載(吉田大輝)

目次