「不同意性交罪」って何ですか

「ほう！」な話『「ほう！」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2023年9月13日

▼Q　「不同意性交等罪」って耳慣れない言葉ですけど、何ですか。

▼A　性犯罪の規定で「強制性交等罪」「準強制性交等罪」とされていた罪が、今年の刑法改正で「不同意性交等罪」に統一されました。

性犯罪の処罰対象は「自由な意思決定が困難な状態で行われた性的行為」と考えるべきですが、これまでは暴行や脅迫をしたり、泥酔させて抵抗不能にしたりする「強制」でなければ、罪にならないかのような誤解が見受けられました。

そこで今回の改正では、「強制」ではなく「性的行為に同意しない意思」に着目して、犯罪となる要件が再定義されました。

例えば、突然の出来事にびっくりして頭が真っ白になり、拒否することができないことがあります。継続的に虐待を受けていた被害者は抵抗すらできないことがあります。上司や先生などに逆らえないこともあります。このような場合を、それぞれ「予想と異なる事態に直面させて驚愕（きょうがく）」「虐待に起因する心理的反応」「社会的関係上の地位に基づく影響力」などと定義。これらの状況や立場を利用して、性的行為に同意しない意思を表明することなどができない状態でされた性行為が、処罰されることを明確にしました。

こうした類型は八つ定められており、「強制」と言えるかあいまいな類型も処罰対象であることがはっきりとし、被害者保護に役立つこととなりました。

当たり前ですが、性的場面では相手方への思いやりを伴う行動が大切になります。そうすれば犯罪になることはないはずです。