「ほう!な話」

2012年10月6日

「責任能力なければ罰せず」が原則

▼Q 統合失調症の身内が傷害事件を起こしてしまい、裁判を受けることになりました。精神疾患のことがきちんと理解してもらえるか心配です。

▼A 刑罰は「責任がある」、すなわち物事の善悪を判断でき、思いとどまれたのにあえて犯罪を犯したと非難できる場合にしか科せらないのが原則です。

統合失調症などの疾患により判断能力がない場合(心神喪失)は無罪、不十分な場合(心神耗弱)は刑罰を必ず減軽する仕組みになっています。起訴する際に捜査機関が簡易鑑定を行っても、結果に納得できない場合、起訴された後に正式な鑑定を申し入れることができます。まずは弁護士に病状などを詳しく伝えましょう。

ところで7月に大阪地裁であった裁判員裁判で、まさに精神疾患を理由に検察官の求刑を上回る懲役刑を言い渡すという非常に稀有な判決が出されました。殺人罪のケースで「被告人がアスペルガー症候群に罹患していて社会復帰後の受け皿がない」「できうる限りの長期の刑を科して内省を促す」などを理由に懲役16年の求刑にも関わらず、この事件で科せられる上限の懲役20年とされたのです。

精神疾患そのものや患者に対する偏見、差別を助長しかねない、と関係者に衝撃を与えました。裁判員には誰もが選ばれる可能性があります。責任(能力)がない場合は刑罰を科せられないという原則について、市民のみなさんに広く理解してもらうにはどうしたらいいのか、弁護士も日々悩んでいるのが現実です。

西日本新聞 10月6日分掲載(篠原一明)

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