「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2016年7月13日

労災は保険も賠償も請求可

▼Q 仕事中の事故で大けがをして後遺症があります。ところが、会社は労災保険を使うなと言うだけで、何も対応してくれません。労災保険などを請求できないのでしょうか。会社に対しても何らかの請求をしたいのですが・・・。

▼A 労働災害(労災)に該当する場合、会社が労災申請を代行してくれることが多いのですが、時にご相談のように会社が協力してくれないことがあります。それでも、労働者が自ら労災保険を請求できます。会社が労災保険料を支払っていなかったとしても、労災保険による給付を受けられます。

事故に会社の落ち度が認められる場合には、会社に対して損害賠償を請求できます。会社の安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求といいます。

労災保険請求と会社への損害賠償請求は併せてできますが、治療費や休業補償など重複する給付も多く、それは両者からは受けられません。どちらかにしか請求できないものもあります。例えば、労災保険では、慰謝料は給付の対象外となり、休業補償は給与の6割ですが、合わせて状態に応じた特別支給金を受けられます。一方、損害賠償請求では慰謝料も対象となり、労災保険でカバーされなかった休業中の給与も請求できます。

重い後遺症がある場合などは、労災保険、会社への損害賠償両方の請求を検討した方がよいでしょう。それぞれ時効制度があり、一定期間を経過すると請求できなくなりますので、ご注意ください。

西日本新聞 7月13日分掲載(池田亮)

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