「ほう!な話」

2011年9月15日

「懲罰」のある米国、ない日本

米国イリノイ州の20代女性が、セクハラを受けたとして勤務先に損害賠償を求めた訴訟で、裁判所は今年6月、約76億円(9500万ドル)の賠償を命じました。セクハラの内容は極めて悪質でしたが、それでも76億円という金額は大きいですね。

米国の裁判所は「企業に対する制裁のための損害賠償」を命じることがあります。企業に膨大な損害賠償金を支払わせることで「割に合わない」「もう同じ過ちは起こさない」と思わせることが目的です。今回のケースも、76億円のうち約64億円分が懲罰的な意味合いでした。

日本の法律では、こうした制裁を加えるための損害賠償の仕組みは存在しません。被害者にどれだけの損害が発生したかを計算し、事件・事故に遭う前の元の状態に回復させることだけを目的とします。それが公平だと考えられているからです。

また米国の裁判所が何十億円という判決を出しても、懲罰的な損害賠償の部分について日本国内にある財産を差し押さえるなどの強制執行はできません。日本の最高裁判所は「見せしめと制裁のための懲罰的損害賠償の部分は、わが国の公の秩序に反するから効力を有しない」、つまり無効と判断しています。

ただ、法律は時代の流れに応じて変わります。将来、世論が変われば、制裁としての損害賠償を認めるような法律もできるかもしれません。

◆天神弁護士センター=092(741)3208(要予約・30分5250円)

西日本新聞 9月15日分掲載(矢口耕太郎)

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